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MED64システムは神経、心臓、骨格筋等の興奮性細胞が発する電気活動を細胞外電位として取得します。これまでに約350報(2017年11月弊社調べによる)の論文で使用されており、代表的な脳スライス標本での応用のみならず、近年ではiPS細胞由来心筋細胞・神経細胞での応用も増えています。
MED64システムの代表的な応用事例が急性脳スライス標本での誘発電位計測です。特に海馬や大脳皮質でのLTP(long term potentiation、長期増強)試験については豊富な実績があります。LTPは一定の刺激強度により数十秒間隔で経時的に取得する誘発電位の大きさ(ベースライン応答)が、テタヌス刺激やシータバースト刺激とよばれる特殊なパターンの刺激を与えた後に持続的に増大する現象です。
急性脳スライス標本の応用事例として、LTP試験に次いで多く取り組まれているのがオシレーション計測です。オシレーションは神経回路網がさまざまな周期で同調的に活動することによって発生する局所電場電位(LFP; local field potential)です。薬物の灌流投与や電気刺激等により誘発することができ、その発生機構の神経生理学的研究や学習・記憶、てんかん等の現象についての薬理学的、病態生理学的研究に応用されています。
MED プローブの記録電極エリアに神経細胞の懸濁液を播種し、培養を続けると、神経細胞同士が自律的に回路網を形成し、外部からの信号入力がない状態でも自発活動を生じるようになります。その自発活動は脳部位ごと、電極ごとに 緊張性(持続性)発火やバースト発火等の異なるパターンを示し、培養日数が経過することでその出現頻度や持続時間、パターン等が変遷していきます。この現象は胎児期の生体内での神経回路網の発達過程をin vitroで再現していると考えられますが、近年ではこれらの標本を化合物の薬効や毒性の評価対象とする試験法の開発が進んでいます。
心筋細胞の単層シート様培養標本は、1拍動ごとに特徴的な細胞外電位波形を示します。1stピーク、2ndピークと定義されるピーク間の間隔(時間幅)はFPD(Filed Potential Duration)とよばれ、細胞内記録でのAPD(Action Potential Duration; 活動電位幅)に相当します。薬剤によるそのFPDの延長作用は、臨床場面における薬剤の催不整脈作用を予測する上での代替指標と見なされており、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞を用いてさかんに実験が行われています。
胃や小腸等の消化管組織を単離して切開後、粘膜を剥離して筋層と漿膜のみの標本を作製し、~34度下で0.1 Hzのハイパスフィルター設定の下で自発活動を計測すると、消化管の部位ごとに異なる特徴を示す自発活動が観察されます。その波形にはCaチャネルの薬理的阻害下でも発生する成分も含まれ、カハール介在細胞が発生するペースメーカー電位と考えられます。